明晰夢の庵

懐かしの純喫茶でコーヒーをしばきながら

御ス氏のガチメンヘラ遭遇記

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自分は学生時代、及び10代はコミュ症で全くモテなかったし、彼女がいたこともなかった。

はじめて彼女ができたのは24歳のときである。

 

職場に新しく入ってきた人だったのだが、まわりと全くなじめず1ヶ月もしないうちに辞めていった。

だが、なんと辞めるときに手紙を渡されたのだ。

 

手紙には「お世話になりました」(ほとんどお世話していない)の一言と電話番号が書いてある。

これは、もしや…と思い、次の日の休みに恐る恐る電話をかけてみた。

 

寝起きだったのか、かなり気怠そうな声である。

僕だとわかると急に声色が変わる。

一言二言お礼を言われたのち、受話器口から聞こえてくるのは、辞めた職場の人達への罵詈雑言だった。

 

少し引きながらもご飯に誘われOKする。

で、自分もプライベートは全くの暇人だったのでそれから何回か会い、3回目くらいの食事で唐突に「付き合ってほしい」と言われた。

 

正直、顔はあまりタイプではないし、性格が少しキツそうだったので躊躇したものの、試しに付き合ってみるかくらいの軽い気持ちでOKした。(童貞だったし、ここは大目にみてほしい)

 

だが付き合って1週間程で激しく後悔することになる。

薄暗い部屋で「私、自殺願望あるから冷たくしないでね」と言われたのだ。

 

は!!!!!!!???!!!!!!!!!!!

イヤちょっとまっ!!!は!!!!!!!!???

 

後頭部から脊髄にかけて凍り付くような感覚に襲われる。

 

そこから先は地獄のような毎日だった。

束縛と被害妄想で気が休まる暇がない。

もちろん携帯は全チェック、車の助手席に乗せれば座席の位置が違うと喚き、横断歩道を女性が横切るだけで「今女見ただろ!」とマジ切れ、さんまの恋のから騒ぎを観ていただけで号泣され何日も嫌味を言われ続ける。

 

職場の飲み会ですら「絶対に行くな!」と言われるが親睦役員だったので行かざるを得ない。案の定、数分おきにメールと着信がビッシリ入っている。

 

仕事から帰ったら連絡なしにアパートのドアの前で待たれてるのは日常茶飯事だし、一人で本屋や買い物に行っても電話で呼び出され、すぐに迎えに行かなければ呪詛の言葉を吐きながら延々すすり泣く。

 

もう限界だった。

毎日、どうやって穏便に別れるかだけを考えていた。

 

別れ話切り出し1回目

「精神的に疲れてて、一人になってゆっくりしたいので別れてほしい。」

別れるくらいなら死んでやるから!の一点張りであえなく敗退した。

 

別れ話切り出し2回目(1回目からインターバル1ヶ月くらい)

「好きな人ができたので別れてほしい」

絶対にその人を殺すと言い出し、悪化するだけだと思ったので別れたかったから嘘をついたと白状すると思いっきりビンタされる。それでも別れてくれない。

 

別れ話切り出し3回目(2回目からインターバル1ヶ月くらい)

小細工は無駄だと感じ、ストレートにひたすら別れてほしいと懇願する。

すると目を見開いたまま何も言わずフラフラと外へ出て行った。

追いかけていくと、なんと彼女はいきなり走ってる車の前に飛び出した。

 

急ブレーキの音が響く。

 

車は幸い彼女の1m程手前で止まった。

運転手が窓を開けて怒鳴っている。

 

だが、彼女はそんなものお構いなしに、全く表情を変えずすぐさま近くの歩道橋を駆け上がって行った。

 

「おいおいおい!ちょっと待ってくれよ!」

 

待ってくれる訳がない。

予想通り、柵に身を乗り出して車が走っている下の道路に飛び降りようとしている。

慌てて身体を押さえ、力ずくで手を引き、なんとか部屋へ連れ戻した。

 

この時点で自分の精神も悲鳴をあげてて本当におかしくなりそうだった。

 

極限状態の中でなんとか一息ついたかに見えたものの、おもむろに彼女が台所で立ちつくしした瞬間、すごくイヤな予感がした。

 

予感は的中した。

 

包丁を取り出し、握りしめている。

 

これはヤバイと思い、包丁を奪おうとすると瞬時に目の前に突きだされた。

 

自分の目の前に包丁の切っ先がある。

 

彼女は「くるな!!!」と怒鳴った後、「イヤアアアアアアアーーー!!!」と奇声を発し、包丁を自分の頸動脈に当てている。

 

こちらも完全に頭の中がパニックで何も考えられない。

自分の心臓の音がうるさいくらいに鳴り響いている。

 

もうなりふりなど構っていられる状態ではなかった。

人生で初めて、何も悪いことをしていないのに床に頭を擦り付けて土下座した。

必死だった。

 

余程滑稽だったのか、それを見て彼女はケラケラ笑っている。

イチかバチか一瞬のスキをついて包丁を奪い、流しの下棚を開けて投げ入れた。

なんとか最悪の事態は免れた。

本当に明日の朝刊に載るかと思った。

彼女は放心状態で抜け殻のようになっている。

 

そして、なんとかなだめて彼女を送り、最後の最後で別れる了承を得ることに成功した。

感無量だった。

帰り、車の中で嬉しすぎてボロボロ泣いた。

自分はようやく解放されたのだ。

 

念のためアパートはすぐに変えて引っ越しした。 

半年後に、「私はやり直したいと思っている」というメールがきてギョッとしたが、冷静に「その気はないです。ごめんなさい」とだけ返して受信拒否した。

 

その後、5年くらい女性と付き合おうという気が全く起こらなくて、ネトゲのFF11にどっぷりハマっていた。

精神的に病んでる人を引き寄せる素質があるのか、4時間歯磨きする人や、深夜の2時過ぎに「助けてください」とメールを送ってくる人に好意を寄せられたこともあったが、初回の教訓を活かして深く関わることなく回避することに成功している。

 

リスクは常にヘッジし続けることが肝要だ、痴情のもつれを甘くみてはいけない。

 

~ fin ~

 

 

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