おっさんレボリューション <第2話>
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第2話 恥ずかしくて情けない生き物
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
テレビでアイドルを観る度に思う。
比べようもないのだが、ステージでキラキラ輝いている彼女達と自分を対比させると、まるで朝日が眩しく反射する透き通った小川のせせらぎと日陰で淀んだドブの上澄みぐらいの差があるのではないかと。
もちろんステージ上で観える華やかな面だけでなく、日々辛いレッスンや熾烈な競争を乗り越えた努力の賜物であり、今もなお、その血の滲むような努力を継続し続けていることは朧気ながらにも理解できる。
だからこそ、こんな年端もいかない若い子が懸命に努力し、アイドルなんだからと潔癖な倫理観を求められ、理不尽にも健気に耐えている姿を見ると、自らの体たらくをこの上なく恥じたくなるのだ。
部屋で一人、完全なるアイドルわーすたMVをYoutubeで観ながら
「まぢでトリケラトープスつよーいー!でもわたし負けなーい!」」
とっくの昔に負けているオッサンが絶叫、現実逃避。
親が見たら嗚咽を漏らして泣くだろう。
精神が煮詰まってくるとオレは散歩する。
散歩は好きだ。散歩はいい。
頭を空っぽにして「へー、ここにこんな建物あったんだ」などと思いながら延々歩く。
誠に非生産的な所業ではあるが、都会から離れた風景や自然はなぜか人をノスタルジーな気持ちにさせるのだ。
春の日差しが最高に気持ちいい。
自販機の前を通りかかると7歳くらいの男の子が「※▽〇※▽〇~」と全く何を言っているのかわからない感じでまとわりついてくる。
おそらく知的障がい児だろうか。
すると近くにいた母親らしき女性が
「あぁー、ご迷惑おかけしてスミマセン…、〇〇くんダメでしょ。」
と平謝りしてきた。
「いえいえ、全然大丈夫です。気になさらないでください。」
無職のくせにカッコつけて紳士っぽく立ち去った。
母親は20代後半くらいだったろうか。
幸薄の美人といった感じだ。
健常な子供を普通に育てることすら自分には想像を絶する大変さだろう。
彼女の境遇や精神的な辛さ、この先の展望を想像すると、同情なのかなんなのかよくわからない気持ちで頭の中がグチャグチャになった。
おまけに旦那の浮気で離婚、身を粉にして働くシングルマザーで自分の時間など一時もないといったように勝手な妄想を始める始末だ。
自分一人だけのために生きている自分がとてつもなく情けない生き物のように思えてくる。
オレの足は自然とハロワへと向かっていた。
※あくまでフィクションであり、自分の現状ではありません。