明晰夢の庵

懐かしの純喫茶でコーヒーをしばきながら

ゲーセンの店主になる夢が粉々に砕かれた話

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僕が高校生のころは格ゲー全盛期でストⅡを始め、餓狼伝説ワールドヒーローズなどが流行っており、あまり向上心がなく下手糞な自分ですらどっぷりハマっていました。

日々対戦でコテンパンにされ、月の小遣い(3000円)のほとんどを消費してしまう見事な雑魚養分です。

 

街中の路地裏にたたずむ2階建てのゲーセンには所狭しと格ゲー筐体が並んでおり、

1PLAY50円と比較的リーズナブルだったため、連日のように猛者が集う盛況ぶり。

 

そこのゲーセンの片隅には30~40歳くらいの長髪ヒゲ眼鏡店主がいつも座っており、店内を整頓したり、時折空いている筐体でプレイしていました。

 

高校の時から既に働くことに対して夢も希望も持っていなかった僕は、次第にその店主の日常を羨ましく感じるようになっていったのです。

 

「自分もこんな風に労働らしい労働もせず、まったりゲーセン管理して、空いた時間帯にゲームプレイする人生を送りたい!」

 

そんなとき、街中のメインストリートに新しいゲーセンがオープンしました。

そのゲーセン前でオーナーらしき50代くらいのオジサンが呼び込みをしており、

「兄ちゃん、よかったら今度遊んでってよ。」

と、ガムを渡してきました。

 

「ガム貰ったことだし遊んでみるか。」と思い入ってみると、中はかなりこじんまりとしており、格ゲー筐体が4つ、ぬいぐるみクレーンが2つあるだけ。

気になる格ゲー1PLAYのお値段はメインストリートに面していることもあってか、強気の100円です。

ワールドヒーローズを1PLAYして帰宅。

 

それからそのゲーセン前を度々通ることはありましたが、あまり客が入ってる様子もなく、2ヶ月もしないうちに見事に潰れて中はスッカラカン、もぬけの殻と化していました。

 

朧気にゲーセンの店主になることを夢見ていたその頃の僕は、

「メインストリートに面したゲーセンでもこんなにアッサリ潰れるのか…。」

とかなり衝撃を受けました。

 

後からわかったことですが、ゲームの筐体や基板はかなり値が張る代物で、あのときガムをくれたオジサンは店舗改装費含め、一体いくら借金を背負ったんだろうと考えると恐ろしくなり、マッタリゲーセン店主などと夢見ていた自分がいかに安直な考えだったのかを思い知りました。

 

ほどなくして格ゲーブームも去り、盛況だったほうの2階建て路地裏ゲーセンも消失。

あらゆるブームが一過性で過ぎ去ってしまう儚さを感じるとともに、「将来の労働から逃げることなど許されない、真面目に働け!」という現実を突きつけられているようでした。

 

そして僕は普通の職につくことすら困難な就職氷河期の荒波にザブンと飲まれたまま浮き上がることすらできず、暗い海の底へと静かに沈んでいったのでした。

~Fin~